自転車に乗れなかった娘が、自分で壁を越えた日のこと

幼児期は成長の幅が大きく、ほんの数か月でできることが増える子もいれば、ゆっくり自分のペースで進む子もいますよね。
それでも親になると、どうしても周囲の子と比べてしまい、「うちの子は大丈夫かな」と不安になることはありませんか。私も、長女の成長を見守る中で、何度も同じ気持ちを味わってきました。

長女は赤ちゃんの頃から発達がややゆるやかで、ずりばいをしない、はいはいをしない、スプーンもうまく使えないなど、気になることがいくつもありました。
もちろん娘なりに少しずつ成長していたのですが、親としては「もう少し早くできてもいいのでは」と焦ってしまうものです。
その中でも、とくに壁になったのが自転車でした。

年少の頃、同じくらいの年齢の子が補助輪なしでスイスイ走る姿を見ても、本人はあまり気にしていない様子でした。
誕生日に買った自転車も、しばらくは庭の隅でほこりをかぶったまま。
「この子はまだ興味がないんだな」と思っていたのですが、ある日突然「私も自転車に乗りたい」と言い出したのです。

そこから家族の特訓が始まりました。
娘はペダルを必死にこぎ、私たち親は後ろで中腰になって支える毎日。
何度も転び、そのたびに泣いて、「もうやめる」と口にすることも珍しくありませんでした。
それでも「お友達と一緒に乗れたら楽しいね」「もう少しでできそうだよ」と励ましながら、練習を重ねていったのです。

ただ、思うようには進みませんでした。
不器用さもあってなかなかバランスが取れず、最後には大きく転んでしまい、それを境に娘は自転車の話を一切しなくなりました。
こちらも無理に続けさせることはやめ、「また本人がやりたくなった時でいい」と考えるようになりました。
親が先回りして焦っても、気持ちが整っていないと身につかないこともあるのだと、そのとき初めて実感した気がします。

それからしばらくして、その日は思いがけずあっさり訪れました。
娘が再び「自転車に乗る」と言い出したのです。しかも今度は、「もう支えなくて大丈夫」とまで言いました。
本当に平気なのかとこちらは半信半疑でしたが、少し離れた場所から見守っていると、娘はふらつきながらも確かに前へ進み始めました。
転ばずにまっすぐ走り、こちらを振り返って見せた満面の笑顔は、今でも忘れられません。
少し照れくさそうで、それでいて「できたよ」と誇らしげな表情でした。

あとで聞くと、娘は自分でお友達に「どうしたら自転車に乗れるの?」とコツを聞いていたそうです。
その話を聞いたとき、ただ自転車に乗れたこと以上に、「自分で解決の糸口を探したんだ」と胸が熱くなりました。
できないことに向き合い、いったん離れ、必要なタイミングで再挑戦し、自分なりの方法で乗り越える。
その過程こそが、娘の大きな成長だったのだと思います。

子どもの成長は、親が思い描く順番どおりには進みません。
でも、本人の中で気持ちが育ち、準備が整った瞬間に、驚くほどあっさり壁を越えていくことがあります。
今、わが子の「まだできないこと」に悩んでいる方がいたら、「その子のタイミングは、きっと別のところにあるのかもしれない」と、少しだけ肩の力を抜いてもらえたらうれしいです。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です